前回、ネットビジネスを立ち上げるには、検索エンジンへの上納金だとか検索エンジン広告が云々といった話をしました。
その包囲網は厚く堅く、中々突破できるものではないので、なにかしらの策が無い限りは検索エンジン広告に頼らざるを得ない状況だと言えます。
検索エンジンはなにもGoogleやYahoo!だけではありません。
様々な業種に君臨する検索エンジン
Googleは情報の検索エンジンで、Appleはアプリの検索エンジンで、Facebookはヒトの検索エンジンで、Amazonはモノの検索エンジンです。
その他、グルメの検索エンジンである食べログ、ぐるなび、ホットペッパーがあるし、旅行で言えば、楽天トラベル、じゃらんnet、トリップアドバイザーなどがあるし、Indeedは求人の検索エンジンです。
様々な業種で包囲網が築かれています。
新規顧客獲得コストを知ることから始める
では検索エンジン広告を使って集客をしたらどうなるか考えてみます。
例えば、Google広告はPPC広告と呼ばれていて、クリックしたら課金されるという仕組みです。広告内容や競合によってクリック単価が自動計算されます。
仮に1クリック200円だったとします。何をどのように売るかは分かりませんが、仮に成約率が1/1000の確率だと仮定します。
つまり、クリックした1000人に1人ぐらいは購入するだろう、という仮説です。
逆に1000人のうち1人にも刺さらない商品やサービスは広告する価値がない言えます。
すると、商品1点を売り上げるために必要な広告費は、
200円×1,000=20万円
となります。これを新規顧客獲得コストと呼びます。
平均売上単価が4,000円であれば-196,000円の赤字ということになります。これじゃやってられませんよね。
しかし、自動車や住宅といった単価が高いものは広告費に20万円掛かっても安いということになります。
あるいは、保険や月額サービスのような一度申し込むと複数年度は定期的に売上があがる商品であればトータルで安い、ということになります。
最低三回は作り直す予算を持つこと
どんな広告を使うにせよ、利益 > 広告費 になるようにしなければならないのです。ここがポイントです。
利益を出すためには広告費を安く抑える必要があります。広告費を安く抑えるには、広告文の推敲や安いキーワードを探したり、LP(ランディングページ)を工夫して成約率を上げるといった工夫が必要です。
工夫が必要ということは、何度か作り直して改善するトライ&エラーが必要ということです。
しかし、先にデザインパートやシステムパートに予算を注ぎ込んで完成させてしまうと、やり直しが効かないのです。
子供の身体がどのくらい成長するかわからないのに、先に制服をオーダーするミスマッチと似ています。
これでは作ったはいいけれど、誰も来てくれない新築の廃墟になる可能性が高いのです。
直感に反するとは思いますが、最初に考えるべきはデザインやシステムではないということなのです。
素人が一回作って成功するほど甘くはないのです。三回は作り直すことを前提にして下さい。
新規顧客獲得コストベースで考えよう
新規顧客獲得コスト(広告費)ベースで考えると、当然のことながら
・新規顧客獲得コストは安いに越したことがない
・新規顧客獲得コストが安い業種ほど広告優位でネットビジネスは加速する
という法則が見えてきます。
直感に反するとは思いますが、広告で売りやすいものは売れる=広告で売れにくいものは衰退する、ということを示唆しています。
前述したように利益率が低いビジネスでは広告を打ちにくいのです。広告すら出せないのです。
ネットビジネスで成功するには広告で売りやすい商品を取り扱うこと
逆説的にネットビジネスで成功するには、広告で売りやすい商品を取り扱うこと、になります。
「えっ?」と思った人は正常です。
普通、売りたい商品が先にあってそれを売るために営業なり宣伝活動を行うものなのですが、ネットビジネスでは逆で、広告で売りやすい商品を見つけてから参入した方が良いのです。変な志とか情熱があると、新規顧客獲得コスト(広告費)で詰みます。
例えば、2019年の今タピオカドリンクが流行っていますが、流行っているからこそ参入するというのが正しいことになります。
と、同時に衰退する兆しが見えたら素早く撤退するフットワークも求められるということです。
タピオカドリンク屋やりたいですか?(笑)
そんな売らんがなのために起業したわけではない、というのは全くもって同意できますが、かといってこれといった解決策がなく、現状維持ではジリ貧になるのが現実です。
プラットホーム企業に牛耳られた世界
これがプラットホーム企業に牛耳られるという意味です。私もプログラミングの仕事だけを考えていれば楽なのですが、今こうして本業の段取りとして、集客やマーケティングの話をしなければならなくなっています。不本意です。本当に面倒臭い話です。
個人であれ、企業であれ自分のビジネスの前に、他人のビジネスに協力させられている状態です。
それを今さら糾弾しても意味がありません。前述したように世論すら操作できるようになった検索エンジンに勝つことは難しいのです。
ですから、ムカつくのを抑えつつ広告費ありきで自分のビジネスを構築する必要があります。
ここまでお分かり頂けたでしょうか?
GAFAよりも真っ黒だった日本の企業体質
余談ですが、日本政府もこの事態に黙っていたわけではなく、危機感を募らせています。プラットホーマー企業の横暴を暴くべき公正取引委員会が2019年1月23日から調査を開始していたのですが、結果はアマゾンより国内企業の楽天市場に不満多数だったというオチです。
つまり、GAFAめ成敗してやる! と意気込んだものの国内大手の楽天の方がよほどブラック企業だったというオチです。GAFAどうのこうの言う前に国内のブラック企業対策に追われるはめになったのです。失笑ものですよね。
▼アマゾンより楽天市場に不満多数、公取委調査
https://www.bcnretail.com/market/detail/20190418_115334.html
まずはプロトタイプ制作から
さて、いよいよ制作の話に触れます。
最初の方でWordPressは大きく分けてデザインパートとシステムパートがあるという話をしました。
どう作ればいいのか? あるいはどのように作ってもらえばいいのか? は新規顧客獲得コストをベースに考えます。
おいおい待てよ! テーマカラーとか、使用するフレームワークは何にするのかという話ではないのか? と驚かれるかもしれませんが、そういったことは枝葉末節です。もっとあとの工程です。
まずは新規顧客獲得コストをベースにプロトタイプを作ることから始めます。
プロトタイプというのはテスト版とか試用版ということです。
ポイントは最小モデルを構築して安直短でテストしてみることです。
例えば、検索エンジン広告を使うとしたら、検索エンジンに広告を出して、そのリンク先としてプロトタイプページを1ページだけ用意します。プロトタイプページには商品やサービスの説明文の他、申込みボタンなどの最終的な成果に繋がるゴールを配置します。
検索ユーザーが目的を達するための最小限の情報だけを用意します。
コンバージョンを改善できないかトライ&エラーを繰り返せ
検索エンジン広告からやってきたユーザーが申込みボタンなどのゴールにタッチするまでの回転率(コンバージョン)を計測します。
例えば、分かりやすく1000人に一人が申し込みボタンをクリックすることが分かれば、あとはクリック単価を掛ければ新規顧客獲得コストが出ます。
クリック単価が約200円でコンバージョンが1/1000であれば、
新規顧客獲得コストは1人あたり20万円となります。
クリック単価が約100円でコンバージョンが1/100であれば、
新規顧客獲得コストは1人あたり1万円となります。
クリック単価とコンバージョンはキーワードと広告文と競合入札による変動相場です。
自分が提供する商品やサービスの単価と比較して、新規顧客獲得コストの方が上回って利益が出なければ、商品やサービスの売り方を工夫するか、広告を改善して、新規顧客獲得コストを下げられないかトライ&エラーします。
クリック単価とコンバージョン率を早見表にしてみました。
コンバージョン率が1/1000ならこうなります。
200円×1,000=200,000円
190円×1,000=190,000円
180円×1,000=180,000円
170円×1,000=170,000円
160円×1,000=160,000円
150円×1,000=150,000円
140円×1,000=140,000円
130円×1,000=130,000円
120円×1,000=120,000円
110円×1,000=110,000円
100円×1,000=100,000円
90円×1,000=90,000円
80円×1,000=80,000円
70円×1,000=70,000円
60円×1,000=60,000円
50円×1,000=50,000円
コンバージョン率が二倍改善して1/500ならこうなります。
200円×500=100,000円
190円×500=95,000円
180円×500=90,000円
170円×500=85,000円
160円×500=80,000円
150円×500=75,000円
140円×500=70,000円
130円×500=65,000円
120円×500=60,000円
110円×500=55,000円
100円×500=50,000円
90円×500=45,000円
80円×500=40,000円
70円×500=35,000円
60円×500=30,000円
50円×500=25,000円
完成させたらそこで終わり
クリック単価は競争入札なので下げ辛いですが、広告文やランディングページを改善することでカバーできる可能性があります。
重要なのはこの時点ではWordPressも凝ったデザインも不要だということです。
あとあとショッピングシステムを導入したいと考えていたとしても、それっぽいハリボテでいいわけです。もっというと全部画像にしても問題ありません。システムが完成してなくても、ダミーの画像だけで構いません。
なぜならここで知りたいのは新規顧客獲得コストだからです。広告を使うのならSEOは関係ないからです。
新規顧客獲得コストは広告文をちょっと変えただけ、使用する画像をちょっといじっただけで大幅に改善/悪化することがあります。
それをテストするために、完成形だとか凝ったデザインにしていては効率が悪いわけです。
こういったテストをA/Bテストと呼びます。
プロトタイプではA/Bテストを行うこと
一般的にA/Bテストの試行回数が高いほどより理想形に近づいていくと言われています。イコールたくさん試せる程度のクォリティで予算を温存しなければ意味がないよ、ということです。理解できたでしょうか?
A/Bテストを繰り返していくと、ユーザーのニーズ、目指すべきサイトの理想形が見えてきます。
時にそれはいびつだったりします。例えば、楽天市場がデザインセンスのかけらもない下品でド派手なデザインばかりになったのも、繰り返しどうすれば購入率が上がるかを試行錯誤していった結果だと言えます。
ガラパゴス化などといいますが、主観を元にしたデザインを追求していくと、データを元にしたデザインと比較して、例えば左腕だけが異常に大きく発達したシオマネキの進化のように、往々にして異形となることが多いのです。
9割が退場の一発屋の世界
A/Bテストを繰り返す中で、新規顧客獲得コストが儲けの射程距離に入れば、半分は成功したも同然です。
逆にテストなしで、顧客不在のまま発注者と受注者の間だけでデザインやシステムを考えても意味がないのです。
このことに気が付いて、理解して実践できる人というのは僅かです。
なぜなら、予算を使い切ってそのまま退場する人が多いからです。痛い目を見てまず再起しないですね。
予算は優先順位と売上貢献度を元に割り振れ
で、A/Bテストの結果、プロトタイプが完成に近づいたら、売上予測を元に制作費を分配します。
分配の基準は売上貢献度で決めます。例えば、A/Bテストの結果、女性客が多くきれいな商品画像と清潔感のあるデザインでないと安心してもらえないことが分かっていたら、デザインパートに予算を多めに割り振ります。
例えば、申込時に決済方法の種類が売上に大きく影響するなら、決済手段を増やすようシステムパートに予算を割り振ります。
全てに均等に予算を割り振るのではなく、優先順位と売上貢献度を元に割り振って行きます。
そうしないと、結局全てをワンストップで作ってしまい、あとあとやっぱりこれがいる、あれは不要だった、ということになってしまうからです。
大事なのは、売上を構成する最低限必要な要素を最優先で開発して、それ以外は工期を複数回に分けて増設していくことです。
デザインパートとシステムパートも分けましょう。細かく締切と品質チェックを設けた方が、発注者も受注者も間違いがありません。
できれば、スケールダウン&資金調達都度投資も考えていきます。
続きます。