今回、自然界に存在しないDNA配列をAIが生成するシステムが発表されました。
このシステムは「Machine-guided design of cell-type-targeting cis-regulatory elements」という論文で紹介され、注目を集めています。
AIモデルが開発され、このモデルにDNA配列を入力することで、3種類の異なる細胞(K562 赤血球前駆細胞、HepG2 肝細胞、SK-N-SH 神経芽細胞腫)の配列の働きを予測、解析することができます。
研究チームは、これらの細胞株を用いて77万以上のDNA配列が遺伝子発現に与える影響を詳細に解析しました。
データ解析には深層学習モデル「Malinois」が使用され、学習を重ねました。
このMalinoisモデルは、2つの塩基対から成るDNA配列の遺伝子発現レベルを高精度で予測することが可能です。
さらに、研究チームは「CODA」(Computational Optimization of DNA Activity)というプラットフォームを構築し、目的とする細胞での遺伝子発現を促す人工DNA配列を効率的に設計できるようにしました。
CODAによって設計された人工DNA配列の性能は実験で検証され、その特異性が自然界に存在する制御配列に比べて高いことが示されました。
優れた特異性は、標的とする細胞の遺伝子を活性化し、非標的細胞の遺伝子を抑制するという2つの機能を実現します。
研究チームはこの設計された配列の有効性を生体内で確認しました。
例えば、ゼブラフィッシュに肝臓特異的な配列を導入し、実際に肝臓での遺伝子発現が観察されました。
また、神経細胞特異的な配列は、マウスの大脳皮質第6層の特定領域で神経細胞特異的な発現を示しました。
この技術の最も重要な特徴は、自然界には存在しない新しい制御配列を設計できる点です。
従来の手法が既存の制御配列を組み合わせたり改変する程度だったのに対し、CODAは完全に人工的な配列を一から設計することが可能です。
プログラマーとして、AIの可能性が遺伝子工学にも新しい風を吹き込んでいるのを見て、非常に興味深く感じます。
技術の進化がどのように生命科学の分野を変えていくのか、注目せざるを得ません。
ただ、それに伴う責任と倫理についてもしっかり考える必要がありますね。