ある日、あなたが体調が悪く、気分が落ち込んだ経験はありませんか?
これは、いわゆる「脳腸相関」と呼ばれるメカニズムによって説明されるかもしれません。
腸と脳が情報をやりとりし、互いに機能を調整するというこの関係は、世界中の研究者が注目している分野です。
腸内環境の乱れは、不眠や発達障害、認知症、糖尿病、肥満、高血圧、免疫疾患、感染症の重症化など、全身の不調に関与していると考えられています。
「脳腸相関」の最新の研究を解説した『「腸と脳」の科学』という著作も、その一部を紹介しています。
特に発達障害には消化器の症状が特徴的に見られ、近年ではこのような疾患が腸内のマイクロバイオータ(腸内細菌群)や腸内代謝物と深く関係していると注目を集めています。
発達障害や精神疾患との関係について、最新の研究成果が交えられ、そのメカニズムが少しずつ明らかにされています。
自閉スペクトラム症は、多くの遺伝子の複雑な影響が絡み合い、発症に至ると考えられています。
その特徴として、言葉の遅れや会話の難しさ、社会的コミュニケーションの困難さが挙げられます。
こうした行動特性と消化器症状の間には、経験的に関係があることが知られています。
興味深いことに、自閉スペクトラム症児の糞便を使って、無菌のマウスに腸内細菌を移植する実験が行われました。
その結果、移植を受けたマウスは自閉スペクトラム症の様々な症状を示したのです。
この研究から、腸内細菌が脳の機能や行動にまで影響を与える可能性が示唆されています。
さらに、特定の物質が、腸内の状態を改善し、自閉スペクトラム症の症状を和らげる可能性も検討されています。
これらの物質が含まれる食品を摂取することで、腸内環境を整え、脳との相関を改善することが期待されています。
こうした研究は、私たちの体のどこかで起きていることが、他のどの部分にも影響を及ぼす可能性を示しています。
これほどまでに腸の状態が心身全体に影響を与えるとは、まさに驚きです。
私たちがプログラムを組む際に多数の要因を考慮に入れなければならないように、体もさまざまな要因で複雑に動いているのです。