心に強く残る出来事や体験は、なぜか他の記憶よりも鮮明に思い出せるものです。
このメカニズムの裏には、脳の中で「記憶を選び抜き、定着させる」謎の仕組みが存在していたようです。
理化学研究所などのチームは、この仕組みの鍵となるのが「アストロサイト」と呼ばれる神経細胞の裏方的存在であることを突き止めました。
アストロサイトは、これまで情報の伝達補助をする細胞と思われてきましたが、今回の発見で記憶そのものの安定化にも深く関与していることが明らかになりました。
研究では、ある体験をマウスに与え、その直後から数日間、アストロサイトが「準備状態」に入り、再び似た体験や強い感情信号があると「記憶の安定化スイッチ」が入るという現象を観測しました。
また、アストロサイトの働きを人為的に操作することで、記憶の強さが変化したり、「消したい思い出」が薄くなったり、逆に「強化したい記憶」が際立つことも分かってきました。
この研究によって、心の傷を和らげたり、より効率的に学習したりする新しい道が開かれるかもしれません。
神経細胞が主人公だと思われがちな脳の世界ですが、アストロサイトという裏方がこんなにも重要な役割を持っているのは非常に面白いと思います。
自分がコードを書いている時に、ソフトウェアの表側の動きが全てのように見えても、その裏で黙々と動き続けている仕組みがシステム全体の安定や機能を支えていることを連想させます。
表舞台に出てこない存在にも、思わぬ力があるというところが、プログラミングの世界とも共通していて、つい感心してしまいました。

