現代のインターネット空間は、かつてないほど「死んだインターネット理論=デッド・インターネット理論」の現実味を帯びています。
この理論は、ネットワーク上のトラフィックや情報の過半数がボットとAIによって支配され、人間同士の対話が消失しつつあるという懸念を指したものです。
こうした背景の中、YouTubeのニール・モーハンCEOは、AIによって機械的に量産される低品質コンテンツ、いわゆる「AIスロップ(残飯)」の拡散を抑制する方針を鮮明にしました。
ある意味コンテンツのデノミ(動画の価値の切り下げ)です。

モーハンCEOはYouTubeが開かれたプラットフォームとして自由な表現を許容しつつも、ユーザーに高品質な体験を保証する責任があると述べています。
かつては異端だったASMRやゲーム実況が主流文化へと昇華したように、新しい表現には寛容であるべきですが、それとスパムやクリックベイト(不当なクリック誘導)との境界線は明確に引かれなければなりません。
YouTubeは既存のスパム対策システムを強化することで、反復的で価値の低いAIコンテンツの露出を抑える取り組みを加速させています。
しかし、この方針には一部のユーザーやクリエイターから冷ややかな視線も注がれています。
YouTube自体が、2025年12月だけで2000万人が利用した質問ツールや、1日600万人以上が視聴する自動吹き替え機能など、AIを積極的に推進しているからです。
ダブルスタンダードですね。
当然SNS上では、プラットフォーム側がAIツールを提供しながら、同時に特定のコンテンツを「スロップ」として排除するのは矛盾しているという声が上がっています。
アルゴリズムによる「低品質」の判定が、独創的ながらも理解されにくい小規模クリエイターへの検閲に繋がるのではないかという不安が渦巻いています。
さらに深刻なのは、人間の心理に根ざした「不気味の谷現象」と、真実性の崩壊です。
精巧なディープフェイクによって他人の権利を侵害する悪質なコンテンツは、本物との区別を不可能にしつつあります。
YouTubeは、AI生成物に対する開示義務を課し、有害な合成メディアを削除していますが、表示だけでは拭えない生理的な嫌悪感や、現実が解体されていく恐怖は消えません。
モーハンCEOは、10年以上の実績を持つContent IDを基盤に、クリエイターが自身の肖像を管理できる新ツールの提供を約束しました。
また、肖像権をデジタル複製から保護するNO FAKES法のような立法の支援を通じ、創造性の完全性を守る姿勢を強調しています。
AIはシンセサイザーやPhotoshopがそうであったように、表現に革命をもたらす強力な道具となり得ます。
2026年には、簡単なプロンプトからゲームや音楽を生み出すといった、新しい創造の形が日常的になるでしょう。
しかし、テクノロジーがもたらす恩恵の裏で、私たちは「人間の心」が介在しない無機質な情報の海に溺れるリスクを常に抱えています。
YouTubeのこの決断は、AIとの共存という輝かしい未来を目指す一方で、デジタル空間の人間性を死守するための、極めて危ういバランスの上に成り立つ戦いであり、同社の収益とコンテンツ自治のバランスをどうするかといった戦いでもあります。



プログラマー的には、この記事で語られている「AIスロップの抑制」は、技術的に極めて難易度の高い「いたちごっこ」であると感じます。
低品質なコンテンツを検知するアルゴリズム自体もまたAIによって構築されますが、生成側のAI(Generator)が検知側のAI(Discriminator)を欺くように学習を繰り返すため、完全に防ぐことは理論上不可能です。
これは敵対的生成ネットワーク(GAN)の概念そのものであり、YouTubeという巨大なプラットフォーム上で、膨大な計算リソースを費やした「AI同士の軍拡競争」が起きていると言えます。
また、Content IDのようなシステムを肖像権にまで拡張するのは、メタデータの管理や誤検知(False Positive)の処理において多大な運用コストを強いるでしょう。
特に「低品質」という主観的な概念をコードに落とし込む際、何をもって「スロップ」と定義するかの閾値設定には、プログラミング上の判断を超えた倫理的・政治的な重圧がかかるはずです。
しかし、超合理的かつ営利的に考えれば、AIスロップを糾弾しつつAIスロップを作る手段を与えることには、「なにかしらメリットがある」ということです。
例えばデータセンターの水冷却問題です。
必ずデータセンターの需要は増すことが予測できます。
他にはGPU製造に欠かせない半導体材料であるレアアース需要は今よりもっと増すことが予測できます。
なぜなら自分たちが激震地にいるのだから。
これらに投資して勝者になることが目的であるのならば、AIスロップの問題は些末なことなのです。
むしろ、自らが警察であり泥棒であるというマッチポンプ(自作自演)です。
このような態度はGoogleがSEOでさんざんやってきたビジネススキームであり、ビックテックがこぞって好む世界的詐欺スキームとなっています。
世界一コンテンツをウェブサイトから著作権無視でクローリングして溜め込み、それに広告をつけてバラまき、見ている人間のアテンションと時間を奪って超絶な成長を遂げた会社。
それがGoogleであり親会社のAlphabetなのです。
彼らにとってもっとも痛いのは「おまえが言うな」なんですね。
だから、自らの手を汚さずにユーザー自身に汚させる。匂わせ、誘う。
「我々は真剣に止めたのに、だっておまえらが!w」
借刀殺人。そういうことです。

