SNSのタイムラインを何気なく眺めていると、ときおり目を引く広告が現れる。
中には、見るからに胡散臭いオンラインカジノや、ギャンブルサイトの宣伝が紛れ込んでいることもある。
なぜ、あれほど大規模で高度な技術を持つ巨大プラットフォームの上で、こうした違法性の高い広告が平然と流れているのだろう。

英国の賭博委員会は、SNS大手のメタが運営するプラットフォーム上に違法オンラインカジノ広告が氾濫している実態を強く非難し、放任的な姿勢を問題視している。
特にギャンブル依存症対策として導入された自主規制プログラム「ガムストップ」を回避するような悪質な広告が出回っている現状は、テクノロジーの力が人間の弱さに牙を剥く典型例だ。
SNS側は「規約に違反した広告や投稿は発見次第削除している」と釈明するが、組織のトップが「通知があれば把握できる」と主張する一方で、実際の現場ではその言葉を鵜呑みにできる状況ではない。
問題の背景には、心理学でいう「間欠強化」の原理が息づいており、不定期に報酬が得られるギャンブルが脳に強い依存性を植え付ける。
依存症に苦しむ人がアクセスを断とうと決意しても、アルゴリズムによる「不意打ち的な」ギャンブル広告がその意思を簡単に打ち砕く。
さらに、こうした広告の裏には、ユーザーの脆弱性につけ込む犯罪者や詐欺師が広告収入を得ようとする構図がある。
SNS運営企業は広告収入モデルを維持するために、法的・倫理的リスクよりも利益を優先しがちだ。
「広告のクリックは自己責任」とする声も聞こえるが、プラットフォームがもつ高度なターゲティング機能やキーワード制限機能を本気で使えば、違法なコンテンツの排除は技術的に十分可能と言える。
実際、メタのエンジニアはAIモデルを活用し、投稿や広告の文脈や画像内容を数ミリ秒単位で解析し、ユーザー嗜好を完璧に把握している。
その技術力をもってすれば、禁止ワードや特定ドメインを含む広告を自動でブロックすることは難しくないはず。
それにもかかわらず、なぜ違法広告のフィルタリング精度がガバガバなのか。
この点、単なる技術不足というよりも、「優先順位の問題」と考えたほうがしっくりくる。
広告審査ロジックを厳格にすれば、まともな広告主の投稿まで誤検知(False Positive)で止めてしまい、短期的な売上減少につながるリスクがある。
それを避けるために、検知精度をあえて緩め、明らかな違法広告だけを手動で報告対応するという最小コスト運用に落ち着いているのだろう。

開発者目線で考えると、経営層から「売上を維持しつつユーザー数も減らさないように」という要求がある限り、根本解決よりも現状維持の仕組みを選択しがちなのは理解できる。
しかし、利便性と依存性のギリギリのバランスの上で成り立っている世界には、技術の使い方次第で人の弱さをサポートする道も、傷つける道もあることを、忘れてはいけないと感じる。

