保険業界を代表する「エリート集団」として名高いプルデンシャル生命で、前代未聞の事件が起きた。
元社員による31億円もの詐取。
長年、多くの顧客の信頼を集め、営業の成果主義を徹底してきたはずの企業の根底が揺らぐ事態だ。
成果主義がもたらす強烈なインセンティブは、時として歯止めのきかない暴走を生む。
特に、営業マンとして「神様扱い」されるような存在が組織内でアンタッチャブルになると、監査の目が曇り、不正が見過ごされやすくなる。
社内に「個人事業主」的な文化が根付き、各自の裁量や責任に頼った経営が進めば進むほど、ガバナンスは希薄になりやすい。
今回の事件の手口は、まさに古典的な詐欺の常套パターンだった。
「元本保証」「高配当」など金融業界では禁止されている甘い誘惑で顧客を引き寄せ、信頼を逆手にとって巨額の現金を預からせる。
SNSを見ても、「キラキラ営業マンの裏でノルマに追われ、禁止された手法に手を染めた」という冷ややかな指摘が相次いでいる。
保険という商材は、無形の「安心」を買うもの。
顧客は会社ブランドと担当者の誠実さに自分や家族の人生を託す。
しかし、ブランドの力に頼り、十分なガバナンスや仕組み作りを怠れば、企業の信頼は一気に崩れる。
このニュースを見ていると、「構造的な欠陥」はどこの業界でも他人事ではないと感じてしまう。
たとえば開発現場でも、一部の「成果主義」や「自由な裁量」を過度に推奨すれば、システムの脆弱性や品質問題が見逃されかねない。
やはり、ルールやレビューの仕組み、透明性の担保は不可欠。
人の信頼や金銭が関わる分野では尚さらそうだ。
間原寛社長の引責辞任が発表されたが、失われた信頼の回復は容易ではない。個人の裁量に依存しすぎるビジネスモデルが、現代のガバナンス基準において限界を迎えていることを、この31億円の代償は物語っている。
ある意味、社員を脱法行為に染めさせるには恐怖✕報酬の二軸があれば十分だということだろうか。

