「回復するウェア」とも呼ばれるリカバリーウェアがここ数年大きなブームになってきた。
着るだけで「疲労回復」「血行促進」といった効果をうたう商品があふれ、一躍注目を集めた「リライブシャツ」もその代表格だった。
しかし、商品のリコール騒動を契機に、アパレル業界全体に「誠実さの欠如」という根本的な問題が浮き彫りになった。
そもそも、リカバリーウェアは「医療機器」でも「雑品」でもある、という曖昧な区分で販売されてきた。
日本には薬機法という厳格な制度があり、人の体や機能に影響を及ぼすことを標榜するなら、正規の医療機器として認可・届出がマストとなる。
だが現実には、多くのブランドが「健康に良いらしい」というイメージだけを先行させて販売しており、法のグレーゾーンを巧みにすり抜けていた。
消費者が「これを着ると楽になる気がする」と感じる背景には、どうしても主観が大きく関わる。
科学的な根拠よりも「なんとなく効果がある気がする」——。
この図式は、かつての「マイナスイオン」や「磁気ネックレス」に似ている。
実際、過去にも「履くだけでやせる」と謳った加圧スパッツやシューズが消費者庁から景品表示法違反で行政処分を受けた件などがあり、今回も構造は同じだ。
SNSを見ると「実際に効果を感じた」「いや、それはプラセボ効果(偽薬効果)だ」と、体感をめぐる論争が絶えない。
人間の心理的な側面や安心感が数値に表れることもある。
しかし企業がその「魔法」を過度に利用し、曖昧な科学的根拠に基づき商品を宣伝する姿勢はやはり信頼を損なう。
今後、アパレル分野に求められるのは流行への追随スピードばかりではなく、きちんとした科学的知見や倫理観だろう。
リカバリーウェアはあくまで睡眠や生活習慣などを補助するもの、という立ち位置が望ましい。
過度な期待や広告に踊らされず、商品の本質とその科学的根拠や法的位置づけを慎重に見極める姿勢が必要だ。
今回の一連の事態は、健康市場の加熱ぶりに対する冷や水ともいえる。
「効くのかどうか曖昧」なビジネスは淘汰され、本当に誠実なものだけが残っていくべきだと感じる。
個人的には、「なんとなく体が楽」という主観を機械的に数値化できたり、ウェアに組み込んだセンサーで客観データを収集できるなら、もっと説得力が出るのに、と思う。
データに裏打ちされた新しい「着る健康サポート」が登場する未来に期待したい。

