2025年、国内の美容室倒産件数が過去最多を記録したという。
特に、設立から10年未満の店舗が約半数を占めており、いわゆる「短命化」が急速に進んでいる。
その背景には、血で血を洗うレッドオーシャン市場の過酷な現実がある。
美容室の約9割は資本金1000万円未満の小規模事業者。
材料費や光熱費が高騰する中、多店舗展開しても顧客離れの恐怖から価格転嫁に踏み切れず、むしろ自分の首を絞める形になっている。
これは、19世紀イギリスのグレシャム法則(悪貨が良貨を駆逐する)の現代版のようだ。
広告費や割引クーポンの乱発、低価格チェーンの席巻で、真摯に技術を磨き適切な対価を求める個人店の体力は削られ、市場淘汰という皮肉な現象が進んでいる。
さらに、「人材の流動化」と「育成の崩壊」も深刻な問題となっている。
倒産理由として目立つ「人手不足」の裏には、従来の徒弟制度的な側面に加え、労働基準法の遵守が厳格に求められ、教育コストが増大している現実がある。
精魂込めて育てたスタッフも、技術を身につけた途端に顧客を引き連れて独立したり、待遇の良い大手に流出するケースが絶えない。
SNSの普及によって個人の影響力が強まり、「店舗=箱」としての価値も相対的に低下している。
最近では、「脱プラットフォーム」への勇気ある動きも見られる。
SNS上では「店舗数を適正化すべき」という厳しい声が上がり、地域コミュニティと強く結びつく質の高い個人店が消える現状は、消費者にも大きな損失となっている。
帝国データバンクの分析でも、成功している店舗は画一的な値上げではなく、エリアの特性に合わせた細やかな価格戦略や、特定技術に特化した差別化で生き残りを図っているという。
髪を「切る場所」としての機能だけでなく、「価値を提供する場所」へと変わることが求められている。
こうした状況は、自分が学んでいるシステムやサービス設計にもリンクする。
激しい競争環境下で、単なるサービス提供だけでなく、顧客の本質的な課題を見極めて固有の価値を示すことが必要なのだろう。
プラットフォーム依存からの脱却、ファンベースの構築など、今の美容業界の生残戦略は他の分野にもそのまま応用できるヒントが詰まっていると感じる。

