調べれば調べるほど、1929年と現在は驚くほど似ている――そう語るのは、アンドリュー・ロス・ソーキン氏。
『リーマン・ショック・コンフィデンシャル』の著者としても知られる彼が、今度は世界恐慌直前の株式市場暴落に迫った新著『1929』を上梓した。
ニューヨーク、プラザホテル。
歩みを東門に向けるソーキン氏の目は好奇心に輝いている。
到着してわずか数秒で、百年前のこの有名ホテルの物語が語られ始める。
彼は慌ただしくボイスレコーダーを取り出し、1929年当時の「人々が集い、常軌を逸した光景」の説明に没頭。
ビジネスマンたちが一堂に会し、熱気を帯びて語り合う様子は、まるで1980~90年代のフォーシーズンズホテルを思い出させるものだったと言う。
プラザホテルは新著の舞台。
主役は、ナショナル・シティ・バンク(現シティバンク)の会長、チャーリー・ミッチェル。
バブルを生み出した張本人の一人であるミッチェルは、ホテルに何度も足を運んだ。
章の冒頭では、1929年6月、彼とゼネラル・モータース創業者のウィリアム・デュラントが共に昼食を取るシーンから始まる。
周囲は二人を一目見ようと遠巻きに凝視し、そこに漂う特別な雰囲気は今も思い出す、とソーキン氏は語る。
9月の暖かな夕方、出版後にプラザホテルへ訪れた彼は、知り合いのCNBC司会者とすれ違う。
振り返っては出版のお祝いの言葉を交わす。
過去と現在が不思議に重なる瞬間だった。
こうした時代の空気感、熱狂、そして崩壊の兆し――それらをデータで可視化できたら、どんなに興味深いだろう、とつい考えてしまう。
人の熱気やバブルの膨らみを定量的に捉え、新たなシグナルをコードで抽出できるなら、現代の投資行動や経済の不安定さも違った角度から洞察できるのではないだろうか。
恐慌の本質に向き合う著者の姿勢に触れて、歴史と現代のバグを検出したい気持ちがますます湧いてきた。

