残念なことに来年秋までコメの価格がなんと「5㎏4200円」ままという見通しが立っています。
キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹によれば「JA農協は25年産米の集荷率を上げるため、農家に対して前年度より3~4割ほど高い概算金を提示した。これにより、26年産米が出回る来年秋までコメ価格は下がらないことが確定した」という。
備蓄米は意味がなかったのだ。
コメの買取価格が安い安いと言われていた農家にとっては嬉しいことだろう。
しかし、コメの小売価格が一挙に2倍はおかしい。
需要が増えれば価格は上昇するものだが、突然消費者がコメをたくさん食べるようになったわけではない。
農家から集荷しているJA農協が市場への供給を抑えたので米価が上がったのだ。
当然のことながら生産が多いのに供給を少なくすればJA農協のコメ在庫は増える。
米は劣化するからいずれ大量の在庫は放出されることになる。
しかし、大量の在庫を買い戻すと約束する日本最大の組織がいたらどうだろう?
JA農協は安心して流通を停滞させ、米価を引き上げたまま長年所得が安い安いと不満を漏らしていた農家へ高いリターンとして還元し、自組織は高い収益を上げることができWin-Winである。
大量の在庫を買い戻すと約束した日本最大の組織とは日本政府である。
政府は売却した備蓄米を1年後に買い戻すという破格の条件を設定している。
放出して買い戻すのであれば、そりゃあ「市場原理」により供給量は増えない。
安心してノーリスクで供給量を減らすことができる。もはや個人がコメを高く買わなくとも政府が買い取ってくれるわけだから、政府が顧客のBtoGビジネスである。
そこにJA農協の明るい農村というイメージはなく、したたかなインテリヤクザが思い浮かぶ。
政府の間違いは個人に近く流通経路が明確な卸売業者や大手スーパーにではなく、米価を低下させたくないJA農協に備蓄米を売り渡したことだ。
かくして備蓄米はJA農協の合法的な自作自演により「闇米」へと変えられ高額取引されることになった。
とうとうしびれを切らした石破総理の指示で、農水省は7月まで毎月10万トンずつ備蓄米の放出を行うことを決めている。
日本最大の米のシンジケートへ、あろうことか日本にあるほぼすべてのコメを渡してしまうことに合意したわけだ。
つまり、コメは今後下がるどころか上昇し続けることになる。
このスキームをほうっておくと他の穀物や野菜も錬金術により金に変えられるだろう。

