中国の大手家電メーカー美的集団が、業界初となる「AIエージェント工場」を湖北省荊州で稼働させた。
ここでは、自社開発のAIシステム「Factory Brain（工場大脳）」が中心となり、洗濯機の製造工程を丸ごとAIで管理している。
何より驚くのは、14のAIエージェントが38種もの主要業務を自律的に分担している点。
認識、判断、実行、フィードバック、最適化といった作業をエンド・ツー・エンドでこなす。
まるで巨大な神経ネットワークのように、各AIエージェントが協調している仕組みが秀逸だ。
特に品質検査の現場が印象的だった。
作業員がスマートグラスを介して初回検査を行うと、過去の検査データから見落としやすいポイントをAIが即座に提示する。
さらに、検査データはリアルタイムで品質エージェントへ連携される。
例えば以前なら検査に15分かかっていたが、新システムではわずか30秒に短縮。
画像認識技術や自動照合の活用による効率化がすさまじい。
また協働ロボットLBR iicoも投入されており、AIと連携して型番認識やプログラムの自動切り替えを担う。
異なる洗濯機モデルが混在しても、AIがどれをどれと識別し、締付作業の精度や効率を人間並みに柔軟に高めているという。
タスクごとにAIや人型ロボット、美的独自のロボット「美羅」が分担し、複雑な工程を無人化している姿には未来を感じる。
工場全体は分散型マルチエージェントアーキテクチャで構成され、各AIエージェントが通信しながら自律協調。
さらに大規模言語モデル推論エンジンも組み込まれており、現場での意思決定スピードや対応力が向上している。
個人的にワクワクしたのは“工場の中枢神経”に例えられるこのシステム設計だ。
頭脳に相当する「工場大脳」が全体の指揮を執り、個々のエージェントが神経回路、ロボットやスマート端末が手足としてタスクを実行する。
もしこの仕組みを他業界に横展開できれば、製造現場の労働力不足やヒューマンエラーといった課題を一気に解決できる可能性がある。
自動車工場など他の“巨大生産現場”にも転用できそうだ。
今後は人型ロボットの「美羅」を中心に据えた工場の役割拡張も進む。
このようなAIエージェントやロボットとの協調により、工場はもはや“生きた神経系”へと進化していく感覚がある。
AIと現場のデバイス連携のプログラム設計や、リアルタイム意思決定システムの開発には、ソフトウェアエンジニアとして挑戦しがいがありそうだ。
こうした“超スマート工場”の実例が世の中に広まるのが楽しみだ。
